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1/31 PHENIX実験と東大CNSにおける GEMとGEMを用いた検出器の開発 東京大学原子核科学研究センター(東大CNS) 浜垣研D 2 織田勧 2006年 12月21日(木) 学術創成「リニアコライダー実験での 革新的測定器システムの開発研究」 第 1回研究会
2/31 わたしたちは • 2000年からアメリカ・ブルックヘブン国立研究所の RHIC加速器のPHENIX実験で核子当り100 Ge. Vの エネルギーで原子核(p, d, 63 Cu, 197 Au)を衝突させ て、高温で高密度の極限状態を作り出し、クォーク が閉じ込めから開放されたクォーク・グルオン・プラ ズマ(QGP)相を生成し、その性質を探っています。 RHIC加速器 PHENIX 実験
3/31 カイラル対称性の回復を捉えたい • QGP生成の数多くの兆候が得られて いる。 • しかしQGPの性質は予期していたも のと違ったので、様々な観点から研究 を深める必要がある。 • QGP相への相転移と同時にカイラル 対称性が回復して、ハドロンの質量が 変化すると予想されている。 • 電子は強い相互作用をしないので、ベ クトル中間子のe+e-への崩壊モードで 測定することで、質量変化をとらえるこ とができる。 r (m = 770 Me. V, t ~ 1. 3 fm/c) e+ew (m = 782 Me. V, t ~ 20 fm/c) e+ef (m =1020 Me. V, t ~ 40 fm/c) e+e-
現状 期待 p 0 e+e-g(Dalitz崩壊)、g e+e-(gamma conversion)が多大 なバックグラウンドになる。 • e+e-のopening angleで区別する。 • – ベクトル中間子 : 角度大 – Dalitz, conversion : 角度小 • 電子の識別とトラッキングを行ないたい。 • バックグラウンドを 200分の 1にすることが目標。 4/31
5/31 http: //www. phenix. bnl. gov/WWW/TPCHBD/ TPCとHBD (2001年時点) Hadron Blind Detector Drift regions 2つの検出器が 一体化している Readout plane Cs. I layer Readout Plane (GEM, m. Mega or PC) Readout Pads r ~ 1 cm f ~ 2 mm Grid HV plane (~ -30 k. V)
6/31 HBDの動作原理 量子効率 光電子のみを捉える。 HV 窓なし Cs. I光電面 光電子の 検出効率 GEM 1 GEM 2 GEM 3 d. E/dxの電 子の波高
7/31 ガス N 0 E cutoff (e. V) Γth 屈折率 光電子数(50 cm) Ar 255 9 42 1. 000283 6 CH 4 185 8. 5 34 1. 000444 7 C 2 H 6 170 7. 8 22 1. 001038 8 CF 4 940 11. 5 28 1. 000620 51 ガス 電場 ドリフト 速度 拡散(横方向) (1 cm) 拡散(縦方向) (1 cm) Ar(90%)-CH 4(10%) 130 V/cm 5. 48 cm/ms 570 mm 378 mm Ar(70%)-C 2 H 6(30%) 390 V/cm 5. 01 cm/ms 306 mm 195 mm CF 4 570 V/cm 8. 90 cm/ms 104 mm 82 mm CF 4ガスはHBDにもTPCにも良いガス。 HBDに対する利点 - 光電子数がとても多い。 TPCに対する利点(または欠点) - ドリフト速度が速い。 - 拡散が小さい。 でも十分な増幅率を得るには高電圧が必要。
8/31 • 問題点 : TPCとHBDを共存させるなら、TPC 用の電場をどうやって作るか? • 2005年くらいの結論 : HBDを先に作り、TPC は様子をみて、後で作る。磁場なし。 B~0 signal electron qp Cherenkov blobs e- partner positron needed for rejection e+ ~1 m air opening angle
9/31 今秋、HBDできました。 • GEM – 23 cmx 27 cm (CERN製) – ストリップにして一部が死んでも困らな いようにしている。 • 今年 10月に設置。 • 来年 1月から本実験を開始する予定。 electrons hadrons
10/31 The GEM stacks l GEMs produced at CERN l. Tested for 500 V in air @ CERN l. Framed & tested @ WIS for gain uniformity l. Tested at SUNYSB prior to installation l. Gain uniformity between 5% and 20% l GEM statistics l 133 produced (85 standard, 48 Au plated) l 65 standard, 37 Au plated passed all tests l 48 standard, 24 Au plated installed l. GEMs combined into stacks are matched to minimize gain variation over the entire detector 5% l All GEMs pumped for many days under 10 -6 Torr prior to installation into detector Quark Matter 2006, A. Milov http: //www. sinap. ac. cn/qm 2006/ppt/Parallel%201. 4/2%20 milov_hbd_session 1_4_talk 2. ppt
11/31 東大CNSにおけるGEM-TPCの開発 • 2001年から2004年にかけて開発しました。 • 結果をまとめた論文が今年出版されました。 – T. Isobe et al. , Nucl. Instr. and Meth. A 564 (2006) 190. – S. X. Oda et al. , Nucl. Instr. and Meth. A 566 (2006) End cap 312. 10 cm Preamp Field cage 36 x 17 cm 3 115 strips Gas vessel 60 x 29 cm 3
12/31 CF 4 ガスと ワイヤーTPC Readout • 位置分解能 – パッド方向 100 mm – ドリフト方向 500 mm
13/31 GEM-TPCの性能評価のためのビームテスト • 2004年 5月にGEM-TPCの性能評価のためのビームテストを KEK PS p 2ビームラインで行なった • ガスは 3種類 – Ar(90%)-CH 4(10%)(P 10), Ar(70%)-C 2 H 6(30%), CF 4 • GEM-TPCの評価項目 – 検出効率(1 Ge. V/c p) – 位置分解能(1 Ge. V/c p) – ビームレートの影響(2 Ge. V/c e, p, p) – エネルギー損失の測定(0. 5 -3 Ge. V/c、e, m, p, p, d) • 磁場は無し セットアップ
14/31 GEM-TPCの信号 Ar-C 2 H 6, ドリフト長 85 mm, 長方形パッド(1つ 1. 09 mm x 12 mm) 1 Ge. V/c 電子ビームのとき ADC 飛跡 時間(6. 4 ms=640 bin, 1 bin=10 ns)
15/31 測定結果 1: 検出効率 1 st 2 nd 3 rd 1. 1番目と 3番目のパッドの列にヒットがある イベントを取って来る。 2. 2番目のパッドにヒットがある割合を検出 効率として用いた。 結果: 十分大きな増幅率では 99%以上の検出効 率が得られた。 Ar-CH 4 99. 3% Ar-C 2 H 6 99. 6% CF 4 99. 8%
16/31 測定結果 2: 位置分解能 1. 2. パッド方向 X パッド3列ごとに、電荷を重みにした加重平 均によりX方向(パッド面内)とZ方向(ドリフト 方向)の位置を求めた 前後の 2列から求めた位置と真ん中の列で の位置との残差から、X方向とZ方向の位置 分解能を求めた 結果 • 最も良かったのは、Ar-C 2 H 6で、長方形パッド で、ドリフト長 13 mmのとき、分解能は 80 mm(X方向)、310 mm(Z方向)だった。 • ジグザグ形パッドでも位置分解能は良くなら なかった 電場 ドリフト 速度 拡散(横方向) @1 cm 拡散(縦方向) @1 cm Ar(90%)-CH 4(10%) 130 V/cm 5. 48 cm/ms 570 mm 378 mm Ar(70%)-C 2 H 6(30%) 390 V/cm 5. 01 cm/ms 306 mm 195 mm CF 4 570 V/cm 8. 90 cm/ms 104 mm 82 mm ドリフト方向 Z
17/31 測定結果 3: ビームレートの影響 目的 イオンフィードバックが抑えられるかどうかを検出効 率、位置分解能を見ることで調べる • • • ビームスリットの幅を変えることでビームレートを変化さ せた ビームレートは 2. 5 cm角のプラスチックシンチで数えた ガスはAr-CH 4, ドリフト長は 85 mm 結果 レートを大きくしても(<5000 cps/cm 2)、高い検出効率 が得られた。位置分解能は 10%程度悪化した • RHIC (Au-Au, √s. NN=200 Ge. V) <d. Nch/dh>|h=0=170, Luminosity=1. 4 x 1027/cm 2/s, sinel=7 barn ⇒ 300 cps/cm 2 : 衝突点から30 cm • LHC (Pb-Pb, √s. NN=5. 5 Te. V) <d. Nch/dh>|h=0~1000, Luminosity~1 x 1027/cm 2/s, sinel~8 barn ⇒ 1400 cps/cm 2 : 衝突点から30 cm
18/31 測定結果 4: d. E/dxの 測定による粒子識別 • • 1. 0 Ge. V/cのp+の エネルギー損失 0. 5 ~ 3. 0 Ge. V/cの運動量の領域でエネルギー損 失を測定した 増幅率が変動したので、パイオンが計算上の値 になるように補正した(最大 30%) ガスはAr-CH 4, ドリフト長は 85 mm 大型のTPCの場合のエネルギー分解能を、 1 Ge. V/cでの測定した分布をもとに評価した – 飛跡が50 cmのときに、エネルギー分解能は パイ オン で 9. 1%、陽子で 8. 0%になると推測される – これはBNLのRHICのSTARのTPCの性能(飛跡 長 67 cm以上で 8%)より良い 1. 0 Ge. V/cのp+とpの 50 cmの 飛跡で予想される エネルギー損失 pに対して 99%の検出効率で、 p+のrejection factor 180 p+ p
19/31 GEM-TPCのまとめ (2005年初め) • 高レート・高粒子密度下で使える飛跡検出器を目指し、GEM-TPCのプロ トタイプを製作した • GEM-TPCの性能評価のためにビームテストを行なった – 検出効率 : 3種のガスとも99%以上 – 位置分解能 : 80 mm (パッド方向), 310 mm (ドリフト方向) (Ar-C 2 H 6、ドリフト長 13 mm) – ビームレート : 5000 cps/cm 2でも検出効率、位置分解能の悪化は小さかった (Ar-CH 4) – エネルギー損失 : 50 cmの飛跡で 8 -9%の分解能が期待できる(Ar-CH 4) • 実機の導入に向けての課題 GEM-TPCはPHENIX実験で使えそう。 – GEM : 放電対策、大型化 – 磁場中でのテスト – シミュレーション – 読み出しチャンネル数を多くしたい • 高速、低ノイズ、小型、安価なエレクトロニクス
20/31 日本でのGEM開発 2002年から 理研・渕上ミクロ・サイエナジー • M. Inuzuka et al. , Nucl. IM A 525 (2004) 529. • ドライエッチング – レーザーエッチング+プラズマエッチング – 円筒形の穴 CERN-GEM エッチン グ方法 chemical CNS-GEM plasma+laser 穴の断面図 bi-conical shape cylindrical shape
21/31 増幅率の時間安定性 • 穴のでっぱりが増幅率に関係していそう。 • GEMの表面にごみが付着していると増幅率 がより変動するようだ。
22/31 これからもより良いGEMを開発したい • 物質量を減らす。 – ポリマーの厚みを大きくして、使う枚数を減らす。 • 100 mm, 150 mm(GEM 3枚で得られる増幅率を 1枚で実現する。) – アルミGEM • 技術的に難しいことがわかった。 – 銅の層を薄くする 5 -8 mm 200 nm • 放電確率を減らす。 – 長年の課題 – 以前よりは格段に安定になってきた。 – でもCF 4では十分安定とは言えない。
23/31 厚いGEMの増幅率 150 mm-GEM 270 V/50 mm (Gain=約4000) で放電。 38762 10688 ● 150 mm-GEM ● 100 mm-GEM (Gain 3/2) [理研玉川さん達の測定結果] ● Standard-GEM (3層構造) p 150 mm-GEM, 100 mm-GEMは同 じVGEM/50 mmでStandard-GEM(3層 )よりもはるかに高いGainを達成。 p 300 V/50 mmにおけるStandard. GEMとのGain比 23 n Standard-GEM: 150 mm-GEM = 1 : 1646 n Standard-GEM: 100 mm-GEM = 1 : 454
24/31 イオンフィードバック X線 (約17 ke. V) chamber 50 mm Shield メッシュ電流 Ic HV 1 3 mm A HV 2 Ar. CH 4 3 mm Ed Mesh(cathode) ドリフト領域 GEM 3 2 mm R GEM 2 2 mm GEM 1 Pad(anode) 2 mm A HV 1<HV 2 典型的な値:HV 1=-2200 V, HV 2=-2100 V, VGEM =350 V パッド電流 Ia Ed =0. 33(k. V/cm) • VGEM を上げるとF が下 がる • GEM 3枚のときは 2枚や1 枚と比べてF が大きい • Tripleの曲線は高い VGEM でDouble, Singleの 曲線へと近づく
25/31 • Ed が大きくなるとF が大きくなる HV 1 HV 2 • Ed を十分小さくすることで、イオンフィード バックを 5%以下に抑えることに成功 • 低いEd でも、要求される分解能や検出効 率を達成できるか検討中 Ed R’/ R = 0. 5 1 2 R R’ Et Ei Ed =0. 5 k. V/cm VGEM =320(V) Ed =0. 33 k. V/cm ● Et /Ei = 0. 5 ▲ Et /Ei = 1 ■ Et /Ei = 2 • Et / Ei が大きいほどF が小さくなる • イオンフィードバックFはEd 依存性 に比べてEt 依存性が小さい Ei = 1. 55-1. 75 [k. V/cm]
26/31 シミュレーション • 電場 Maxwell 3 D • ガス Garfield 電場計算結果 n 穴中の電位分布 p VGEM = 350 V 電子の進行方向 350 V CERN-GEM CNS-GEM
27/31 実験結果とSimulation結果の比較 ■ CNS-GEM (Monte-Carlo) ■ CERN-GEM (Monte-Carlo) ● CNS-GEM (Experiment) ● CERN-GEM (Experiment) ▲ CNS-GEM (Runge-Kutta) ▲ CERN-GEM (Runge-Kutta) B [1/V] Gain. CNS/Gain. CERN Monte-Carlo 0. 034 1. 08 Experiment 0. 024 1. 06 Runge-Kutta 0. 017 1. 07 Gainの絶対値・fit functionのslopeはともに一致しないが、 Gain. CNSとGain. CERNの比はほぼ一致している。
28/31 東大CNSでもHBDを開発しています。 回折格子 真空紫外分光器 50 ~ 300 nm 分解能 0. 5 nm PMT Half mirror ( Mg. F 2 ) GEM光検出器 重水素ランプ 115 nm ~ 400 nm Mg. F 2 window ( Cutoff 115 nm ) • Ar/CH 4(90/10)中での Cs. I GEMの量子効率 • 180 nmで 10%程度の量子効率がある。 • 180 nm以下で量子効率が下がっている。 波長( nm )
29/31 • 広島大学放射光科学研究センターの REFER(150 Me. V電子)で現在テスト中。 – GEM(サイエナジー) – Cs. I蒸着(浜松ホトニクス) – プリアンプ(CNS, KEK) – Ar/CH 4(9/1), Ar/CF 4(5/5), CF 4 – GEMは動作しているが、 加速器のノイズが大きくて大変。 • J-PARCでの実験での使用を目標に開発中。 – http: //j-parc. jp/Nucl. Part/pac_0606/pdf/p 16 -Yokkaichi_2. pdf – 10 cmx 10 cm GEM 2, 700枚を使う。
30/31 GEMの応用のために中性子検出器用 2次元読み出し回路も開発中です。 • n+10 B 7 Li+a • n+Gd e-+g • 自動車のエンジン内部の液体の動 作を捕らえる。 • ピクセルに届いた電荷を順番にスイ ッチングして、少数のADCで毎秒 1000フレームで読み出す。 • 目標位置分解能数十mm • X線イメージングにも使える。
31/31 まとめ • QGP相転移にともなうカイラル対称性の回復による ベクトル中間子の質量変化を調べるためにPHENIX 実験にGEMを用いた検出器がインストールされた。 来月からデータ収集開始予定。 • GEM-TPCは高エネルギー重イオン衝突実験で使う ことができるだろう。 • 日本で開発しているGEMは安定に動作するように なって来た。 • よりよいGEMの開発。 • GEMを用いた検出器の開発も進めている。
浜垣研 現+元メンバー + 関連のある人たち 浜垣秀樹、小沢恭一郎、犬塚将英、坂口貴男、 木野幸一、松元貴志、亀谷聡一朗、洞口拓 磨、梶原福太郎、郡司卓、磯部忠昭、栗原成 美、織田勧、森野雄平、斎藤翔太、荒巻陽紀、 山口頼人、佐野哲、菅原章太、玉川徹、四日 市悟、真木祥千子
People in PHENIX-HBD project v Weizmann Institute of Science (Israel) A. Dubey, Z. Fraenkel, A. Kozlov, M. Naglis, I. Ravinovich, D. Sharma, L. Shekhtman (on leave from BINP), I. Tserruya (project leader) v Stony Brook University (USA) W. Anderson, A. Drees, M. Durham, T. Hemmick, R. Hutter, B. Jacak, J. Kamin v Brookhaven National Lab (USA) B. Azmoun, A. Milov, R. Pisani, T. Sakaguchi, S. Stoll, C. Woody (Physics) J. Harder, P. O’Connor, V. Radeka, B. Yu (Instrumentation Division) A. Sickles, v Columbia University, Nevis Labs (USA) C-Y. Chi v University of Tokyo (Japan) T. Gunji, H. Hamagaki, M. Inuzuka, T. Isobe, S. X. Oda, K. Ozawa, S. Saito v RIKEN (Japan) S. Yokkaichi v Waseda University (Japan) Y. Yamaguchi v KEK (Japan) S. Sawada Y. Morino,
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