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生活・行動支援のための自律型 センサネットワークに関する研究 政策・メディア研究科 後期博士課程 間 博人
アウトライン • 背景 – センサネットワーク – ベイズ推論機構 • 研究課題 – センサネットワーク上で動作可能な軽量なコンテキスト 検出機構に関する研究 – 複雑なコンテキスト検知を実現する効率的な送信データ 削減手法に関する研究 – ノード間のパケットロスに耐性を持つコンテキスト検出機 構に関する研究 • • • 関連研究 まとめ 参考ご意見と論文修正箇所について
背景:センサネットワーク • 小型の無線センサノードが様々な実空間オ ブジェクトに埋め込まれている環境を想定 • 複数のセンサノードがネットワークを構成 • 様々な応用システム 利用主体 社会・自治体 防犯・防災 環境モニタリング • センシング機能 • 無線通信機能 • データルーティング機能 交通モニタリング サベイランス 物流・ ビル管理 マーケティング プラントモニタリング 農場モニタリング 企業・組織 個人 福祉サービス 無線センサノード 看護・医療・教育 ホームセキュリティ 犯罪防止 対象領域 モノ 人 部屋 境域環境 (屋外)広域環境 – モニタリング – 生活・行動支援 • センシング情報を実空間にフィードバックする センサネットワーク
背景:センサネットワークの問題 • • • ハードウェア資源の制約 ネットワークの切断性 ネットワークの構成方法 セキュリティ問題 センサノードのコスト・サイズ
背景:センサネットワークの問題 ハードウェア資源の制約 • • 電力資源 計算資源 通信資源 メモリ資源 Micaz Mote の仕様
背景:センサネットワークの問題 ネットワークの切断性 • センサノード間は無線で接続しているためパ ケットロスや通信の途絶が生じる • センサノードが故障したり電池切れなどでネッ トワークが切断するおそれがある
背景: センサネットワークを利用した 生活・行動支援 • 3つのフェーズ 1. センシング:センサネットワークによるデータ収集フェーズ 2. 情報の解析:情報解析・処理フェーズ – 人や環境の状態をコンテキストとして抽出 3. アクチュエーション:アクチュエーションフェーズ – コンテキストに基づいた機器制御 ベイズ推論 センシング 情報の解析 生活・行動支援 アクチュエーション
背景:自律型センサネットワーク • 自律型センサネットワーク – センサネットワーク内でセンシング、情報の解析 を行いセンサネットワークが自律的に生活・行動 支援をする • 非自律型センサネットワーク – センサネットワークはセンシングのみを行う – センサネットワーク外のサーバが情報の収集、解 析を行う
背景:ベイジアンネットワークを利用し たコンテキストの解析 • グラフ構造により視覚的にセンサデータ間の依存関係をモデ ル化できる • 条件付き確率分布の学習をすることで、確率推論が可能と なるアルゴリズムが確立している 親ノード: コンテキスト 子ノード: センサデータ ベイジアンネットワーク用いて環境や人の状態をコンテキストとして抽出し、 その結果に基づいてユーザの生活・行動支援を行うシステムをベイズ推論機構と呼ぶ
背景:ベイジアンネットワークを利用し たコンテキストの解析 • グラフ構造により視覚的にセンサデータ間の依存関係をモデ ル化できる • 条件付き確率分布の学習をすることで、確率推論が可能と なるアルゴリズムが確立している 条件付き確率分布 (事前確率)の学習 ベイジアンネットワーク用いて環境や人の状態をコンテキストとして抽出し、 その結果に基づいてユーザの生活・行動支援を行うシステムをベイズ推論機構と呼ぶ
背景:ベイジアンネットワークを利用し たコンテキストの解析 • グラフ構造により視覚的にセンサデータ間の依存関係をモデ ル化できる • 条件付き確率分布の学習をすることで、確率推論が可能と なるアルゴリズムが確立している 子ノードの証拠状態(エビデン ス)を条件としたコンテキスト の事後確率の計算 ベイジアンネットワーク用いて環境や人の状態をコンテキストとして抽出し、 その結果に基づいてユーザの生活・行動支援を行うシステムをベイズ推論機構と呼ぶ
背景:ベイズ推論機構の要件 1. 2. 3. 4. 5. 6. 汎用性 配置性 省電力性 応答性 資源制約下での柔軟なコンテキスト表現 ネットワーク切断性への耐性
背景:ベイズ推論機構の分類 • 集中型ベイズ推論機構 (CBIM) – センサネットワークの全てのデータをサーバに集約し解析する ベイズ推論 基幹サーバ センサネットワーク • 分散型ベイズ推論機構 (DBIM) – 各センサノードに推論エンジンを載せ、センサノード自身がベイズ推 論の計算を行う ベイズ推論 基幹サーバ センサネットワーク
背景:ベイズ推論機構の問題 • CBIM: 常にサーバが必要 – 配置性 – ネットワーク切断性への耐性 • DBIM: センサノードでの膨大な計算処理が必要 – 省電力性 – 応答性 – 資源制約下でのコンテキスト表現 • CBIM, DBIM 共に要件を満たしていない
研究課題設定 • 大目標: センサネットワークが自律的に生活・行動 支援をする基盤技術の提供 – ベイズ推論機構の6つの要件を満たす 研究課題A: センサネットワーク上で動作可能な軽量なコン テキスト検出機構に関する研究 研究課題B: 複雑なコンテキスト検知を実現するデータ削減 手法に関する研究 研究課題C-1: ノード間のパケットロスに耐性を持つコンテキ スト検出機構に関する研究 研究課題C-2: オフィス環境での空調制御システムと RHBIM の評価
研究課題A: センサネットワーク上で動作可能な 軽量なコンテキスト検出機構
ハイブリッド型ベイズ推論機構 (HBIM) • サーバでベイズ推論の計算を実行し計算結果であるPPTをセンサノード に配布する • 一度配布するとセンサネットワーク内でコンテキストの検出が可能 基幹サーバ Working true false Lights dark bright Temperature 0 1 cold warm 0 1 Movement 0 1 cold warm Sound 0 1 cold warm Time 0 1 cold warm 0 1 (1) ベイジアンネットワークによ るコンテキストのモデル化 センサネットワーク (5)リージョン毎にノードグループを構築 (2) ベイズ推論 n 2 (3) PPTの生成 n 3 (6)マスターノードがスレーブ ノードのデータを収集 (4) PPTをマスター ノードへ配送 n 1 (7)マスターノードがコ ンテキストを検出
HBIM:サーバ側の動作 1. ベイジアンネットワークを使った コンテキストのモデル化 2. 事後確率表(PPT:posterior probability table)の生成
HBIM: センサノード側の動作 • 制御したい空間毎にリージョンに分割 • リージョン毎にノードグループを構築 スレーブノード Region 0 Region 2 Region 1 Region 3 • データの収集とコンテキストの検知 n 2 n 3 マスターノードがスレーブ ノードのデータを収集 PPT マスターノードが n 1 コンテキストを検出 マスターノード センサノード上で計算処理が必要ない
消費電力の評価 実装と評価環境 • Cross. Bow Micaz Mote への実装 – 音/光/温度/加速度/磁気/マイク/電力のセンシング – リーダー選択アルゴリズムによるグループ構築 – PPTの受信 – PPT に基づいたコンテキストの検知 • 評価環境 – マスターノードは15秒毎にスレーブノードの測定データを収集 しコンテキストを検知 – マスターノードとスレーブノードは隣接ノードとする – 理想的な状況での通信を想定 – ベイズ推論アルゴリズムとしてLikelihood Weighting を用いる
評価: コンテキスト検出時の消費電力の比較 • 一回コンテキストを検出する際に消費する平均電力量の評価 • スレーブノードの消費電力はグループノード数に関係なく一定 • HBIM のマスターノードの消費電力はノードの増加に比例して大きくなる (20台で 0. 09 m. J)が、DBIMの計算コスト(131. 8 m. J)と比較すると問題に ならないほど小さい HBIMのマスターノードとスレーブノードの 消費電力量 HBIMとDBIMの消費電力量
研究課題A:まとめ • センサネットワーク内でのベイズ推論が可能な ハイブリッド型ベイズ推論機構の設計・実装 • 既存手法に対し消費電力の面で有効である
研究課題B: 複雑なコンテキスト検知を実現す るデータ削減手法
複雑なコンテキスト検知を実現するデータ削減手法 • 事後確率表(PPT)はモデルが複雑になるに従い データ量が増大する • センサノードのメモリ資源は極めて制限されている – Micaz の場合:Programメモリ 125 k. B, フラッシュメモリ 512 k. B • 2つの手法を用いたPPTの削減 – PPTのインデックス化 – インデックスの選択送信
PPTのインデックス化(1) • 確率変数に番号をつける – (ex. Working を 0 とする) • 確率変数の値を数値化する – (ex. dark を 0、 bright を 1 とする )
PPTのインデックス化(2) • 組み合わせの値に対応する数をまとめる ことで、事後確率分布の各組み合わせをイ ンデックスに割り当てる dark, cold, stable, calm, day 0 0 0 • 上の組み合わせの場合、5 -bitのバイナリ インデックス 00000となる 組み合わせインデックス CI TRUE 0 (00000) 0. 61 1 (00001) 0. 07 2 (00010) 0. 2 4 (00100) 0. 03 8 (01000) 0. 3
インデックスの選択送信 • センサノードが必要なインデックスのみを選択して送信する – 制御のトリガーとなるインデックスのみを選択する • コンテキストの事後確率が、任意に定めた閾値よりも高いイ ンデックスのみを選択する CI TRUE 0 (00000) 0. 61 1 (00001) 0. 07 2 (00010) 0. 2 4 (00100) 0. 03 8 (01000) 0. 3 15 (01111) 0. 05 16 (10000) 0. 92 23 (10111) 0. 08 27 (11011) 0. 88 29 (11101) 0. 16 30 (11110) 0. 08 31 (11111) 0. 03 number of rows to send 閾値が0. 8の場合、2エントリのみを送信すればよい threshold 閾値を調整することで、送信量を調整できる
評価環境 • 評価環境は研究課題Aで用いたMicaz Mote での実装を使用 • 確率変数の数とコンテキストの複雑度 (complexity)を軸に評価する – 複雑度:確率変数の組合せ数(ex: 32 (2^5) )
評価:コンテキストの複雑度に応じた PPTデータサイズの検証 • 確率変数の数に従いPPTデータサイズは指数関数的に増加する • インデックス化と選択送信により大幅にデータサイズは減少している • センサノードのメモリ容量の限界は 10 k. B から500 k. B – Micaz の場合:Programメモリ 125 k. B, フラッシュメモリ 512 k. B – 確率変数の個数が15程度であれば実現可能 PPTインデックス化の効果 インデックス選択送信の効果
評価:複雑度に応じたコンテキスト検出時間 • 複雑度が1024(2^10) の時に全エントリを処理した場合でも 1. 3 ms で終了している • インデックスの選択送信によりインデックスサイズが減ること で解析時間も減少する • DBIMの検出時間: 3. 7 sec (複雑度 1024) 複雑度と解析時間の関係
研究課題B:まとめ • PPTのインデックス化とインデックスの選択送信か らなるデータ削減手法の提案 • データ削減手法を用いることで送信データサイズお よび解析時間を削減できることを示した
研究課題C-1: ノード間のパケットロスに耐性を 持つコンテキスト検出機構
パケットロスに耐性を持つコンテキスト検出機構 リライアブルハイブリッド型 ベイズ推論機構 (RHBIM) • 対象とするパケットロス – サーバからノードへPPTを配送する際のパケットロス – ノード間で測定データの受け渡し時のパケットロス Data n 2 PPT n 1, n 2, n 3 n 1 基幹サーバ Data n 3 ノードグループG = (n 1, n 2, n 3)
サーバからノードへPPTを 配送する際のパケットロス • PPTの再送率に影響する • PPT配送先ノードの選択手法 – ノードグループ内の複数のノードにPPTを配送 PPT n 1, n 2, n 3 n 2 PPT n 1 基幹サーバ ノードグループ内に 最低1つ以上のPPTが必要 n 3 n 1, n 2, n 3 ノードグループG ={n 1, n 2, n 3} 一つもない場合はPPTを再送
PPT配送先ノードの選択手法 3つの配送方式を定義 • Single node delivery (SND) – ノードグループの1台のセンサノードを選択しPPTを配送 • Multi node delivery (MND) – ノードグループから一定割合のセンサノードを選択しPPT を配送 • All node delivery (AND) – 全てのセンサノードにPPTを配送
ノード間で測定データの受け渡し時のパケットロス • 送信するPPTの選択手法 – 測定データの欠損を想定して複数のPPTを配送する PPT n 1, n 2, n 3 n 1, n 2 基幹サーバ n 2 ノードグループG= {n 1, n 2, n 3} n 1 n 3 測定データ PPTセット n 1, n 2, n 3 n 1, n 2 基幹サーバ n 2 ノードグループG= {n 1, n 2, n 3} n 1 n 3 測定データ パケットロスを、必要なPPTをノードに配送する必要がある PPT(n 1, n 2, n 3) Temp(1) warm cold … Hum(1) humid dry …. Temp(2) warm cold … PPT(n 1, n 2) Hum(2) humid … Temp(3) warm … Hum(3) humid … p. p. 0. 8 0. 5 0. 9 0. 1 … Temp(1) warm cold … Hum(1) humid dry … Temp(2) warm cold … Hum(2) humid … p. p. 0. 6 0. 1 0. 8 0. 2 …
Quality of inference (Qo. I) • PPTの評価指標として導入 – どれだけノードが協調してコンテキストを検出しているかの指標 • 推論が失敗した場合 Qo. I は0になる CPPT (Complete PPT) n 1, n 2, n 3 測定データ n 1, n 2, n 3 Qo. I = 1 PPT n 1, n 2 測定データ n 1, n 2 Qo. I = 0. 67 PPT n 1, n 2, n 3 PPT n 1, n 2 測定データ n 1, n 2, n 3 Qo. I = 0. 33 Qo. I = 0. 67
Expected Qo. I • ノード間のロス率(Loss(ni))がわかると各PPTのExpected Qo. Iがわかる PPT Loss(n 1) = 0 n 1 Loss(n 3) = 0. 7 Loss(n 3) = 0 Loss(n 2) = 0. 1 Loss(n 2) = 0 PPT A, B, C EQo. I: 1 PPT A, B A, C EQo. I: 0. 67 n 3 n 2 PPT A EQo. I: 0. 33 PPT A, B, C EQo. I: 0. 27 27% PPT A, B A, C EQo. I: 0. 6 EQo. I: 0. 2 PPT A EQo. I = 0. 33
送信するPPTの選択手法 • Single PPT set (SPPT) – CPPT のみ送信する PPT CPPT n 1, n 2, n 3 SPPT n 2 CPPT n 1, n 2, n 3 n 1 基幹サーバ n 3 ノードグループG ={n 1, n 2, n 3}
送信するPPTの選択手法 • Random PPT set (RPPT) – RPPT 1: 全てのPPTをランダムに決定 – RPPT 2: CPPT を必ず入れて残りをランダムで決定 PPT n 1, n 2, n 3 RPPT 1 PPT n 1, n 2 n 1, n 3 n 1 ランダムに選択 PPT RPPT 2 CPPT n 1, n 2, n 3 n 1, n 2 ノードグループG ={n 1, n 2, n 3} PPT CPPT n 1, n 2, n 3 n 1, n 3 n 1 基幹サーバ n 2 n 1 n 3 ランダムに選択 ノードグループG ={n 1, n 2, n 3}
送信するPPTの選択手法 • Weighted PPT set based on Qo. I (WPPT) – 各ノードは隣接ノードとのLoss(ni) を測定しサーバに通知する – Expected Qo. I が高いPPTから順にPPTセットを構築する EQo. I WPPT PPT 0. 8 n 1, n 2, n 3 0. 7 n 1, n 2 0. 4 n 1, n 3 0. 3 n 1 EQo. Iが高いPPT を選択 n 2 n 1, n 2, n 3 基幹サーバ n 1 n 3 ノードグループG ={n 1, n 2, n 3}
研究課題C-2: オフィス環境での空調制御シス テムとRHBIM の評価
オフィス環境での空調制御システム • 知的生産性の向上には空調により快適な空間を提供するこ とが重要 • 従来型の空調制御は、対象空間の室温を送風機の空気吸 込口のみで計測し、送風の温度や方向を決定する – 温度ムラ、熱だまりの発生 • センサネットワークを利用することできめ細かな制御を実現 できる
RHBIM を用いた空調制御の特徴 • 温度情報を解析するためのサーバを設置す る必要がない – サーバの監視者が必要ないため低コストで運用 できる • 無線センサノード同士の通信が阻害されても 解析を継続できる
実証実験 • ORF 2007 において三菱電機株式会社との 共同研究の一環としてデモ展示を行う
デモシステム • • • ゲートウェイからあらかじめPPT を配布 空間を上部と下部の2つのリージョンに分割し、上部に3台、下部に4台のセンサ ノードを配置 各リージョンのマスターノードはグループ内の測定データを収集し、リージョンの 快適コンテキストを検出 マスターノードは検出されたコンテキストに応じて制御命令を空調コントローラに 送信する 温度、風向、風速の3つを制御 上部リージョン センサノード 下部リージョン デモ用空調室内機 制御命令送信 GUI RS-232 C ゲートウェイ LAN 空調NW ノード アプリケーション 空調コントローラ 空調シミュレータ ゲートウェイ
事前実験:実験空間の設定と センサノードの配置 • 研究室(20. 9 m× 7. 3 m× 3. 1 m) に 21台のMicaz Moteを設置 し局所的な熱だまりと運用時のパケットロスを計測 • 基準ノード(n 0)から約1 m間隔の同心円上にn 1 -n 20 を配置 室内機 1 室内機 2 n 4 室内機 3 n 8 n 6 室内機 5 室内機 6 n 20 n 14 n 17 n 15 n 2 n 9 n 5 n 0 室内機 4 n 11 n 13 n 19 n 16 n 1 n 3 n 7 n 10 n 12 n 18
実験結果: パケットロス • • • 双方向のロスの測定 n 0は 1秒おきに 1時間ブロードキャストで送信 n 1 -20 は確認応答パケットをn 0 に送信 確認応答パケットが得られたノード数は平均13. 8 (分散 1. 8) 基本的には距離に応じてパケットロス率が高くなる 距離とパケットロス率の関係
評価:空間モデルの作成 • RHBIM を用いた空調制御シナリオにおいて提案手法の有効性を評価 • 夏期の冷房を想定した空調制御のシミュレーションを行う • 条件 – 各室内機は稼働時に 16℃, 1 m/s の風を送風 – 非稼働時には送風を停止 – 初期温度 30℃, 相対湿度 70% 単位面積当たりの熱負荷条件 計算条件 空間モデルと環境シミュレーションの様子
評価:空間モデル上でのRHBIMの動作 • 実空間でMicaz Mote を設置した場所にモニタリング ポイントを設定 • 実空間で計測したロスパターンからデータの受信が 成功するか否かを決定 • マスターノードによるコンテキストの検出は10秒おき
評価:リージョンの設定 R 1 • 5つのリージョンを設定: • 実験の対象とする空調制御空間を規定 – – – R 1: 良いリンク R 2: 中程度のリンク R 3: 悪いリンク R 4: 良いリンクと中程度のリンク R 5: 良いリンクから悪いリンク R 2 R 3 R 4 R 5
PPT配送先ノードの選択手法の評価 • ノードグループ内の全てのノードにPPTが配送されなかった場合PPTを 再送する • 各リージョン毎にノードグループのメンバをランダムに 10通り選択 ( ex. R 1: n 1, n 2, n 3) • n 0からPPTを配送する オーバヘッド • PPTの送信はブロードキャ ストで行うため、配送先ノード が増加しても送信量は変わ らない • ANDは複数ノードでPPTを 管理することになるため、 ノードグループ全体で見た際 のメモリ占有率は高くなる 配送先ノード選択手法とPPT再送率 • SND はR 1では5%程度の再送率であるが、R 3, R 5では50% • ANDは全てのリージョンで最も再送率が低い
送信するPPTの選択手法の評価1 • 各リージョン毎にノードグループのメンバをランダムに10通り選 択(ex. R 1: n 0, n 1, n 2) • n 0 にPPTセットを送信する(n 0がマスターノード) • n 0は 10秒おきにスレーブノードからデータを収集しコンテキスト を検出 • RPPT, WPPTは各手法に基づき2つのPPTを選択
送信するPPTの選択手法の評価2 • • SPPTは検出率、Qo. I 共にロス率が高い環境では大幅に低下 WPPTはロス率が高い環境であっても検出率は低下しないがQo. I は低下する – 構成ノードが少ないPPTを選択したため – どのリージョンにおいても最も高い検出率とQo. I を達成している • オーバヘッド – SPPTの送信サイズ: 60 bit – RPPT, WPPT の送信サイズ: 100 bit – 60 bit PPT選択手法とコンテキスト検知率 PPT選択手法と Qo. I
研究課題C: まとめ • HBIM のロバスト性を改善した RHBIM を提案 – PPT配送先ノードの選択手法 – 送信するPPTの選択手法 • オフィス環境での空調制御システムに適用し 有効性を評価
関連研究 • ベイジアンネットワークを利用してセンサデータから 特定のコンテキストを得る研究 – Donald J. Patterson, Lin Liao, Dieter Fox, and Henry Kautz: “Inferring high-level behavior from low-level sensors”, in Proc. of Ubicomp 2003, (2003 -10). • 通常の行動パターンからの逸脱度を検知する異常検知システム – F. Sparacino: “Sto(ry)chastic: a bayesian network architecture for user modeling and computational storytelling for interactive space”, in Proc. of Ubicomp 2003, (2003 -10). • 美術館での行動からユーザに適したナレーションを提供する手法 中央集中型のアプローチ 本研究の主眼は特定のコンテキストを検知するモデルの提案ではなく、 これらのベイジアンネットワークモデルが駆動するための基盤技術の提案にある
関連研究(2) • センサネットワークの信頼性を向上させる研究 • 各レイヤでの提案がある – MAC層: W. Ye, J. Heidemann, and D. Estrin: “An energy-efficient mac protocol for wireless sensor networks”, in Proceedings of the 21 st International Annual Joint Conference of the IEEE Computer and Communications Societies (INFOCOM 2002), New York, NY, USA (2002 -6). – ネットワーク層: Alec Woo , Terence Tong , David Culler, Taming the underlying challenges of reliable multihop routing in sensor networks, Proceedings of the 1 st international conference on Embedded networked sensor systems, November 0507, 2003, Los Angeles, California, USA – トランスポート層: Chieh-Yih Wan , Andrew T. Campbell , Lakshman Krishnamurthy: “PSFQ: a reliable transport protocol for wireless sensor networks, Proceedings of the 1 st ACM international workshop on Wireless sensor networks and applications” , Atlanta, Georgia, USA (2002 -9). RHBIMを使うことでロスが生じても推論品質と検出率を高めることができる 共に使うことでよりRHBIM の性能を高めることができる
発表論文 • 雑誌掲載論文 – 間 博人,門田 昌哉,中澤 仁,徳田 英幸,"センサ/アクチュエータネットワークにおけ るネットワーク切断を考慮した確率推論機構", 情報処理学会論文誌 Vol. 48(2), pp. 459 -470, 2007年 2月. – 間 博人, 戸辺義人, 徳田英幸, "無線LANにおけるチャネル状態依存スケジューリング の実装評価", 情報処理学会論文誌 Vol. 43(12), pp. 3939 -3950, 2002年 12月. • 国際発表論文 – H. Aida, M. Kadota, J. Nakazawa, H. Tokuda "A Disconnected Bayesian Analysis for Wireless Sensor-Actuator Networks", Third International Conference on Networked Sensing Systems (INSS 2006) Vol. 46(2), pp. 459 -470, May. 2006. – H. Aida, Y. Tobe, M. Saito, H. Tokuda "A Software Approach to Channel-State Dependent Scheduling for Wireless LANs", The 4 th ACM International Workshop on Wireless Mobile Multimedia (WOWMOM 2001), pp. 33 -42, July. 2001.
結論 • センサネットワークが自律的に生活・行動支援をする基盤技術 の設計・実装・評価を行った – センサネットワーク上で動作可能な軽量なコンテキスト検出機構 • HBIMの設計・実装を行い、既存手法より消費電力の面で有効であることを 示した – 複雑なコンテキスト検知を実現する効率的な送信データ削減手法 • PPTのインデックス化とインデックスの選択送信の手法を提案し、送信デー タサイズおよび解析時間を削減の有効性を示した – ノード間のパケットロスに耐性を持つコンテキスト検出機構 • PPT配送先ノードの選択手法と送信するPPTの選択手法からなるRHBIM を提案し、オフィス環境の空調制御システムにおいてRHBIMのロバスト性 を示した センサネットワークの利用範囲の拡大 センサネットワークの活用を促進
参考ご意見と論文修正箇所について1 信頼性が重要なアプリケーションでの利用について • 信頼性が重要なアプリケーションは、提案方 法で対応出来るのか。Ack を送りパケットを 届けなくて良いのか。(清木先生)
参考ご意見と論文修正箇所について1 信頼性が重要なアプリケーションでの利用について • 信頼性が重要なアプリケーションでは、必要 な際に必ずコンテキストを得ることが重要 • RHBIMを用いることでパケットロス率が高い 環境下でも95%以上の確率でコンテキストを 検出可能
参考ご意見と論文修正箇所について1 信頼性が重要なアプリケーションでの利用について 100%コンテキストを検出するためには? 1. パケットの再送を用いることで、コンテキスト の検出が可能 – 但し、パケットロス率が高い環境下では、コンテキ ストの検出までにかかる時間を制限できない t 0 マスターノード Δt t 0+Δt n 1 コンテキスト検出 Data req スレーブノード n 2 スレーブノード n 3 Data
参考ご意見と論文修正箇所について1 信頼性が重要なアプリケーションでの利用について 100%コンテキストを検出するためには? 2. マスターノード単体の推論モデルから計算さ れた事後確率表を、マスターノードが保持する – マスターノード単体のPPT を利用することはあま り望ましくない → Qo. Iによる評価を行っている(再送を併用すればQo. I は向上する) PPTセット n 1, n 2, n 3 n 1 PPTセット n 1 基幹サーバ n 2 n 1, n 2, n 3 測定データ ノードグループ(ABC) n 1 n 3
参考ご意見と論文修正箇所について1 信頼性が重要なアプリケーションでの利用について • 修正点 – 7. 10 節に新たに「信頼性が重要なアプリケーションでの利 用」の章を追加 – 信頼性が重要なアプリケーションでの利用に関する議論を 記述
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • DBIM に対しHBIM は常に優位なのか。複雑 なモデルの場合、表を渡すより、センサノード で計算する方が良いという状況もあるのでは ないか。(清木先生)
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • 5項目に関して比較 – コンテキストの検出時間 – コンテキスト検出に消費する電力量 – メモリ消費量 – 配置問題 – パケットロス耐性
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • コンテキストの検出時間 – 全エントリを処理した場合 1. 3 ms (複雑度 1024) – インデックスの選択送信により解析時間は減少 – DBIMの検出時間: 3. 7 sec (複雑度 1024) HBIMが優位 複雑度と解析時間の関係
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • コンテキスト検出に消費する電力量 – 一回コンテキストを検出する際に消費する電力量 – HBIM のマスターノードの消費電力はノードの増加に比例して大きくな る (20台で 0. 09 m. J)が、DBIMの計算コスト(131. 8 m. J)と比較すると問 題にならないほど小さい HBIMが優位 HBIMとDBIMの消費電力量
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • メモリ消費量 – センサノードのメモリ容量の限界は 10 k. B から500 k. B – HBIMはPPT の削減手法を用いることで、PPT のサイズを削減している – DBIM は、PPTを配送する必要はないが、ベイズ推論の計算時に非圧縮のPPT と 同等のメモリ空間が必要 PPT を削減してからセンサノードへ配送するHBIMが優位 PPTインデックス化の効果 インデックス選択送信の効果
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • 配置問題 • • DBIM はサーバが必要ない HBIMはサーバが必要 • 一度PPTを配送してしまえば、センサノードのみでコンテキ ストの検出が可能 コンテキスト検出 PPT ベイズ推論 PPT センサネットワーク DBIMが優位 HBIM PPT コンテキスト検出 センサネットワーク
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • パケットロス耐性 – HBIM はPPT 配送時のロスやデータ収集時のロスによりコン テキストの検出が不可能になることがある – DBIM は、センサノード内でベイズ推論の計算を行うため、パ Data ケットロスが生じても推論の継続は可能 n 2 n 2 ベイズ推論 PPT n 1, n 2, n 3 n 1 基幹サーバ n 3 DBIMが優位 Data n 3 HBIM ノードグループ(n 1, n 2, n 3)
参考ご意見と論文修正箇所について2 DBIM との比較について • 修正点 – 5. 5 節に「DBIM との比較」を追加し、HBIM とDBIM の比較に関する記述を追加
参考ご意見と論文修正箇所について3 推論の定義について • HBIM が消費電力が少ないと言っているが、 それは推論をやってないからだろう.推論は 最初の一回だけだから,この比較はおかしい .(萩野先生) • 推論をやる場合と事後確率表だけとの違い がわからない.推論とは確率表を作ることか、 それともコンテキストを得ることか。(萩野先生 )
参考ご意見と論文修正箇所について3 推論の定義について • 明確に区別 – ベイジアンネットワークの推論モデルを利用した コンテキストの検出 • 「コンテキストを検出する」 – Likelihood weighting 等を用いたベイズ推論の 計算処理 • 「ベイズ推論の計算処理を行う」
参考ご意見と論文修正箇所について3 推論の定義について • センサノード上でコンテキストを 1 回検出する際に消費する平 均電力量の比較 • HBIM はセンサノード上でベイズ推論の計算処理を行わない ため、センサノードの消費電力が極めて少ない HBIMとDBIMの消費電力量
参考ご意見と論文修正箇所について3 推論の定義について • 修正点 – 「推論する」という曖昧な表現を避け、「コンテキス トを検出する」 および「ベイズ推論の計算処理を 行う」 という表現に統一
参考ご意見と論文修正箇所について4 複雑なベイジアンネットワークの利用について • どのような複雑なベイジアンネットワークが 実現可能か。単純な一段階に見える。(萩野 先生) • 複雑なベイジアンネットワークの場合、イン デックスの閾値という手法で対応出来るのか。 (萩野先生)
参考ご意見と論文修正箇所について4 複雑なベイジアンネットワークの利用について • 事後確率は、証拠状態(エビデンス)を条件 とした条件確率 • 事後確率表(PPT: Posterior probability table) は、エビデンスとなる確率変数の組み 合わせと事後確率から構成される
参考ご意見と論文修正箇所について4 複雑なベイジアンネットワークの利用について • n 1 からn 7 が全てセンサデータが与えられる確率変数であ れば、Context の事後確率は、n 1 からn 7 のエビデンスを 条件とした条件付き確率となる
参考ご意見と論文修正箇所について4 複雑なベイジアンネットワークの利用について • n 1 からn 7 が全てセンサデータが与えられる確率変数であ れば、Context の事後確率は、n 1 からn 7 のエビデンスを 条件とした条件付き確率となる
参考ご意見と論文修正箇所について4 複雑なベイジアンネットワークの利用について • 複雑なモデルであっても、PPT はエビデンスとなる確率変 数の組み合わせと事後確率から構成される n 1 warm cold n 2 warm cold n 3 warm n 4 warm n 5 warm n 6 warm n 7 p. p. warm 0. 8 warm 0. 2 warm 0. 6 • インデックスの選択送信は、事後確率が閾値以上のインデ ックスを選択する手法であるため、複雑なモデルであっても、 問題なくアクチュエーションのトリガとなるインデックスを選 択することができる
参考ご意見と論文修正箇所について4 複雑なベイジアンネットワークの利用について • 修正点 – 5. 6 節「複雑なベイジアンネットワークの利用」を追加 – 図 5. 5 を追加し、複雑なベイジアンネットワークにおける、 PPT の生成と削減アルゴリズムの適用について説明を 加えた
参考ご意見と論文修正箇所について5 時間制約の前提について • 時間制約の前提がない.どういうように想定し ているのか.設計の前提として,1 分で答えが 出ればいいとすれば,再送プロトコルがあれ ば良いことになってしまう.(戸辺先生)
参考ご意見と論文修正箇所について5 時間制約の前提について • RHBIM は、複数のノードに複数のPPT を配送することで信頼 性を高めているため、パケットロスが生じた場合でも、即座にコ ンテキストを検出することが可能 – Δt = 1 sec とすることで、1秒後にコンテキストを検出可能 • 再送プロトコルにより、信頼性を確保しようとした場合、コンテ キストをいつ検出できるかは予測できない t 0 マスターノード Δt t 0+Δt n 1 コンテキスト検出 Data req スレーブノード n 2 スレーブノード n 3 Data
参考ご意見と論文修正箇所について5 時間制約の前提について • パケットロス率が高い環境下での再送 – 2 秒毎に送信 – 300 から400 秒応答がない状況が1時間に 3 、4 回発生 n 17のパケット到着間隔
参考ご意見と論文修正箇所について5 時間制約の前提について • RHBIM は秒単位の応答性が必要になるような時間 制約が厳しいアプリケーションにおいて特に有効 • RHBIM と再送プロトコルを併用することで信頼性を より高めることも可能 • 修正点 – 6. 6 節に時間制約の前提に関する議論を追加 – 時間軸でみた場合のコンテキスト取得時のセンサノード間 のプロトコルを明確にするため、図 6. 5 を詳しい説明ともに 追加
Q&A
本研究において ベイジアンネットワークを使う利点は何か? • ベイジアンネットワークで作成したモデルが、 センサネットワークで利用できる – センサデータを確率変数として扱うことができ、セ ンサネットワークを利用した生活・行動支援のモ デル化に適している • 実際に観測されていない状況でも確率推論 により適切な確率を算出できる
アクチュエータへの制御の際の パケットロスについて • 関連研究で述べたセンサネットワークの 信頼性を向上させる研究の利用 • 複数のアクチュエータを配置する
本研究が社会に対する貢献 • センサネットワークが自律的に生活・行動支 援を行うための基盤技術の構築 – センサネットワークの利用範囲の拡大 – センサネットワークの活用を促進
評価:コンテキストの複雑度に応じた データサイズと解析時間の検証 • PPT削減の効果は複雑度が増すにつれ大きくなる • 複雑度が1024(2^10) の時に全エントリを処理した場合でも 1. 3 ms で終了している 複雑度とデータサイズの関係 複雑度と解析時間の関係
最終目標 • センサネットワークが自律的に生活・行動 支援をするメカニズムの提供
high Region 0 Region 1 Region 2 Region 3 Region 2 height low
実験結果: パケットロス(2) • パケット到着間隔からロスパターンを調べる • バースト的にパケットロスが発生している n 1のパケット到着間隔 n 17のパケット到着間隔
実験結果: 温度の測定結果 • 1時間測定した平均温度 • n 8 や n 3 などで熱だまりがみられる
PPT n 1, n 2, n 3 SND n 2 n 1 n 3 基幹サーバ ノードグループG ={n 1, n 2, n 3} PPT n 1, n 2, n 3 MND n 2 PPT n 1 n 3 基幹サーバ n 1, n 2, n 3 ノードグループG ={n 1, n 2, n 3} PPT PPT n 1, n 2, n 3 AND n 2 n 1 基幹サーバ n 1, n 2, n 3 PPT n 3 n 1, n 2, n 3 ノードグループG ={n 1, n 2, n 3}
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