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放射線と 現代物理学の最先端 広島大学大学院理学研究科 志垣賢太 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校 /志垣賢太
今日の話のながれ n 放射線とは何だろうか? ¨ 放射線の正体 ¨ 自然界に存在する放射線 ¨ 人 の放射線とその応用利用 ¨ 人体への影響 n 放射線が拓いた現代物理学 ¨ 物質の究極の構成要素と宇宙誕生のシナリオ n n 宇宙誕生 (ビッグ・バン) を実験室で再現する まとめ 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 2
放射線の正体 n (高速の) 粒子や電磁波 (電波) ¨ α線 (ヘリウムの原子核) ¨ β線 (電子) ¨ γ線 (エネルギーの高い電磁波; 原子核から) ¨ X 線 (エネルギーの高い電磁波; 原子から) ¨ 中性子線 (中性子) ¨ 宇宙線 (主としてμ粒子) 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 3
放射線はどこにある? n 自然界に存在する放射線 ¨ 地殻/大気/食物中に存在する放射線源 ¨ 宇宙から降りそそぐ放射線 n 人 の放射線 ¨ 医療用放射線源 n 例: X 線写真、CT、粒子線がん治療施設 ¨ 業用放射線源 n 例: 原子力発電所、放射光施設 ¨ 科学研究用放射線源 n 2004年 6月14日 例: 粒子加速器、放射光施設 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 4
放射線の性質 n 人の五感では感じられない ¨ 見えない、聞こえない、嗅げない、味わえない、 触れられない n 物質 (空気、人体、など) と 「相互作用」 する ¨ 電離 (イオン化)、蛍光、感光、発熱、… ¨ これらの性質を利用して検出、測定が可能 ¨ 相互作用の様子は放射線の種類により異なる n 2004年 6月14日 例えば透過力は α線 < β線 < γ線 < 中性子線 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 5
放射線の発見 (19 世紀末 ~) n X 線の発見 ¨ 1895年 n ウランの放射性 (α線、γ線) の発見 ¨ 1896年 n ベクレル (1903年 ノーベル賞) レントゲン夫人の手 ラジウム (α線、γ線) の発見 ¨ 1898年 n レントゲン (1901年 ノーベル賞) キュリー夫妻 (1903年 ノーベル賞) 陰極線 (電子線) を構成する電子の発見 ¨ 1899年 トムソン (1906年 ノーベル賞) W. C. レントゲン M. キュリー と P. キュリー 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 6
放射線を出す (放射性 = 不安定な) 元素 n 「不安定な」 元素の原子核は 自然に崩壊して 「安定な」 原子核に変わる 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 7
地殻中に存在する放射線源 n 地殻中の元素の存在比 (クラーク数) ¨ 1 位 ¨ 2 位 : ¨ 38 位 ¨ 53 位 ¨ 79 位 2004年 6月14日 酸素 珪素 : : トリウム ウラニウム ヘリウム 金 49. 5 % 25. 8 % : 1. 2 10 -3 % 不安定元素 4 10 -4 % 不安定元素 8 10 -7 % 5 10 -7 % 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 8
宇宙から降りそそぐ放射線 (宇宙線) n 地表付近では 1 cm 2 あたり 毎分約 1 個のμ粒子 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 9
大気中に存在する放射線源 n 地中 (コンクリートなども含む) からの放出 ¨ ラドン (222 Rn)、 トロン (220 Rn) 重い気体なので地下室などで高濃度の傾向 n 地下水に溶け込んだものが 「ラドン温泉」 n ¨ n 山梨県増富温泉は世界最高レベルの放射能泉 宇宙線により作られる ¨ 炭素 n 2004年 6月14日 14 (14 C) 木材などの年代測定に利用 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 10
食物中に存在する放射線源 n カリウム 40 (40 K、カリウム中の 0. 017 %) ¨ 体重 60 kg の男性からは毎秒約 4500 個のγ線 男性 女性 人体中のカリウム量 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 11
いろいろな場所で放射線を測定してみると n 例えば新幹線で移動しながら測定 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 12
自然放射線量の地域差 n 大地 + 宇宙線 + 食物 (大気は含まない) ¨ 花崗岩の多い西日本で多い傾向 私たちはこの辺り 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 13
自然界に存在する放射線のまとめ n 日本では年間 2. 4 m. Sv 程度 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 14
人 放射線の医学応用利用例 放射医学総合研究所 n n X 線写真 X 線 CT シンチレーション写真 (出典: 東芝アステオン) 日立 重イオンがん治療 FORTE) 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 15
自然放射線と人 放射線 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 16
人体への影響 急性効果と晩発効果 n 本人への影響と遺伝的影響 n 定量的な理解と適切な防護対策がほぼ確立 n ¨ 7 シーベルト以上の全身被爆でほぼ 100 % 死亡 ¨ 妊娠初期は胎児の放射線感受性が高く要注意 n 2004年 6月14日 ただし 50 ミリシーベルト以下では影響は出ない 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 17
人体への好影響? 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 18
放射線が拓いた現代物理学 n 古典物理学から現代物理学への転換の契機 ¨ 19 世紀末までに物理学は 「完成」 していた 力学 (ニュートン) n 電磁気学 (マクスウェル) n ¨ 放射線発見を契機に 「現代物理学」 n 「古典」 物理学に加えて… n 量子論 (ボーア、ハイゼンベルク) n 相対論 (アインシュタイン) ¨ 20 が誕生 世紀の実験技術進歩は放射線取扱の歴史 検出器 (霧箱、計数管、泡箱、放電箱、計数箱、…) n 粒子加速器 (サイクロトロン、静電加速器、 シンクロトロン、…) n 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 19
19 世紀の物理学で扱えないものとは? n 現代物理学はどこで必要か? ¨ 微小なものを扱うには量子論が必要 n 物質の究極の構成要素 ¨ 原子 → 原子核 → 陽子・中性子 → 「クォーク」 ¨ (質量に比較して) エネルギーの高いものを 扱うには相対論が必要 微小なもの (量子論の対象) n 宇宙 (とその構成要素) n ¨ 宇宙・原子核・素粒子 2004年 6月14日 = 現代物理学の賜物 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 20
宇宙・原子核・素粒子の物理学 現代物理学の最先端 n 極小世界 (クォーク) と極大世界 (宇宙) n ¨ クォークの性質を調べるのと宇宙誕生の様子を 調べるのは実は同じこと! ¨ ビッグ・バンを (小規模に) 再現したい! n 2004年 6月14日 高エネルギー原子核衝突による 「リトル・バン」 実験 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 21
宇宙の歴史と物質の成り立ち 宇宙の歴史 15 by 1013 s 生命の誕生:現在 太陽系の誕生 超新星爆発 重い元素の合成 原始星の誕生 宇宙背景放射 宇宙の晴れ上がり 原子の生成 102 s ヘリウム原子核の生成 1 by 10 -10 s 10 -43 s クォークの閉じ込め 物質・反物質の対称性破れ クォークの生成 インフレーションの発生 0. 00 s 宇宙誕生(ビッグバン) 10 -34 s 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 22
宇宙誕生の瞬間を実験室で再現する n 高エネルギー原子核衝突実験 ¨ 通常は取り出せないクォークが飛び交う状態 n 宇宙誕生 10 万分の 1 秒後以来の再現! ¨ 巨大な n アメリカではニューヨーク郊外で稼動中 ¨ n 「粒子 (原子核) 加速器」 が必要 核子あたり 100 Ge. V の衝突型 ヨーロッパではスイス・ジュネーブに次世代器を建設中 核子あたり 2800 Ge. V の衝突型 ¨ 2007 年完成予定 ¨ n 日本では茨城県東海村に建設中 ¨ 2004年 6月14日 2007 年完成予定 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 23
ブルックヘブン国立研究所 (ニューヨーク) 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 24
「相対論的重イオン衝突型加速器」 n 右回りと左回りの 2 つの超伝導粒子加速器 ¨ 周長 3. 8 km の半地下トンネル内 ¨ 金原子核を光の速度の 99. 95 % まで加速 ¨ 6 か所ある実験室で正面衝突させる 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 25
私たちが推進している PHENIX 実験 n 2000 年夏に実験を開始し現在も継続中 ¨ 「クォーク・グルーオン・プラズマ」 n 2004年 6月14日 の兆しを発見 近いうちに宇宙誕生直後の再現が確認される見通し 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 26
Brazil China University of São Paulo, São Paulo Academia Sinica, Taipei, Taiwan China Institute of Atomic Energy, Beijing Peking University, Beijing France LPC, University de Clermont-Ferrand, Clermont-Ferrand Dapnia, CEA Saclay, Gif-sur-Yvette IPN-Orsay, Universite Paris Sud, CNRS-IN 2 P 3, Orsay LLR, Ecòle Polytechnique, CNRS-IN 2 P 3, Palaiseau SUBATECH, Ecòle des Mines at Nantes, Nantes Germany University of Münster, Münster Hungary Central Research Institute for Physics (KFKI), Budapest Debrecen University, Debrecen Eötvös Loránd University (ELTE), Budapest India Banaras Hindu University, Banaras Bhabha Atomic Research Centre, Bombay Israel Weizmann Institute, Rehovot Japan Center for Nuclear Study, University of Tokyo, Tokyo Hiroshima University, Higashi-Hiroshima KEK, Institute for High Energy Physics, Tsukuba Kyoto University, Kyoto Nagasaki Institute of Applied Science, Nagasaki RIKEN, Institute for Physical and Chemical Research, Wako RIKEN-BNL Research Center, Upton, NY Rikkyo University, Tokyo Institute of Technology, Tokyo University of Tsukuba, Tsukuba Waseda University, Tokyo S. Korea Cyclotron Application Laboratory, KAERI, Seoul Kangnung National University, Kangnung Korea University, Seoul Myong Ji University, Yongin City System Electronics Laboratory, Seoul Nat. University, Seoul Yonsei University, Seoul Russia Institute of High Energy Physics, Protovino Joint Institute for Nuclear Research, Dubna Kurchatov Institute, Moscow PNPI, St. Petersburg Nuclear Physics Institute, St. Petersburg State Technical University, St. Petersburg Sweden Lund University, Lund 2004年 6月14日 12 か国、 58 研究機関、 共同研究者 480 人 (2004 年 1 月現在) USA Abilene Christian University, Abilene, TX Brookhaven National Laboratory, Upton, NY University of California - Riverside, CA University of Colorado, Boulder, CO Columbia University, Nevis Laboratories, Irvington, NY Florida State University, Tallahassee, FL Florida Technical University, Melbourne, FL Georgia State University, Atlanta, GA University of Illinois Urbana Champaign, Urbana-Champaign, IL Iowa State University and Ames Laboratory, Ames, IA Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, NM Lawrence Livermore National Laboratory, Livermore, Ca University of New Mexico, Albuquerque, NM New Mexico State University, Las Cruces, NM Dept. of Chemistry, Stony Brook Univ. , Stony Brook, NY Dept. Phys. and Astronomy, Stony Brook Univ. , Stony Brook, NY Oak Ridge National Laboratory, Oak Ridge, TN University of Tennessee, Knoxville, TN 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太Nashville, TN 27 Vanderbilt University,
今日の話のまとめ n 放射線について多少は身近に感じただろうか ¨ 私たちは放射線の中で暮らしている n 自然放射線の量は日本では年間 2. 4 m. Sv 程度 n 人 放射線も生活の中で様々に応用利用されている ¨ n 医学利用/科学研究利用 人体への影響の可能性などを理解した上で 安全に活用しなくてはいけない 放射線の発見から始まった現代物理学は 物質の究極要素と宇宙誕生に迫っている n (なにごとも) 考えて、理解し、判断できる 科学的な姿勢を身に付けよう n 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 28
この資料を作るのにお世話になった人たち n 高橋徹さん ¨ 広島大学大学院先端物質科学研究科 n 金田雅司さん ¨ 理研ブルックヘブン研究センター n ジェフリー・ミッチェルさん ¨ ブルックヘブン国立研究所 PHENIX 実験を一緒に進めている人たち n 日本原子力文化振興財団 n 2004年 6月14日 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 29
さらに詳しいことに興味がある人は n 原子力・放射線について ¨ 日本原子力文化振興財団 n n http: //www. jaero. go. jp/ 素粒子・原子核・宇宙物理学実験について ¨ 広島大学大学院理学研究科物理科学専攻 クォーク物理学研究室 n http: //www. hepl. hiroshima-u. ac. jp/quark/ ¨ あるいは志垣に直接でも n 2004年 6月14日 shigaki@hiroshima-u. ac. jp 放射線と現代物理学の最先端/忠海高校/志垣賢太 30
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