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量的金融緩和政策・出口戦略と為替相場 MBA国際金融2017 1
FRBのゼロ金利と量的金融緩和政策 • 2008年 12月16日にFF金利の目標値を 0%~ 0. 25%に設定。 • 第 1次量的金融緩和政策(QE 1)【 2008年 11月~ 2010年 3月】 3000億ドルの国債と 1. 25兆ドルの住宅抵当担保証券(MBS)と 1750 億ドルのその他証券を購入することによって、マネタリーベースを 2008年 10月の 1. 1兆ドルから2010年 3月には 2. 1兆ドルに急増。 • 第 2次量的金融緩和政策(QE 2)【 2010年 11月~ 2011年 6月】 6000億ドルの長期国債を毎月750億ドル、購入することによって、マ ネタリーベースが2011年 6月には 2. 6兆ドルに達した。 • 第 3次量的金融緩和政策(QE 3)【 2012年 9月~ 2014年 10月】 毎月400億ドルのMBSと 450億ドルの長期国債(合計850億ドル)を 購入し続け、マネタリーベースが2014年 8月に 4. 0兆ドルに達した。 2014年 10月に終了。 MBA国際金融2017 2
図 1 a: 日米欧の政策金利 Data: Datastream MBA国際金融2017 3
図 1 b: 日米欧のマネタリーベース Data: Datastream MBA国際金融2017 4
FRBの出口戦略 • FRBは量的金融緩和政策の出口戦略に向けて量的金融緩和 を減速。 • MBSの毎月の購入額を 400億ドル⇒ 350億ドル(2014年 1月) ⇒ 300億ドル(2014年 2月)⇒ 250億ドル(2014年 4月)⇒ 200億ド ル(2014年 5月) ⇒ 150億ドル(2014年 7月) ⇒ 100億ドル(2014 年 8月) ⇒ 50億ドル(2014年 10月) ⇒終了(2014年 10月) • 長期国債の毎月の購入額を 450億ドル⇒ 400億ドル(2014年 1月) ⇒ 350億ドル(2014年 2月)⇒ 300億ドル(2014年 4月)⇒ 250億ド ル(2014年 5月) ⇒ 200億ドル(2014年 7月) ⇒ 150億ドル(2014 年 8月) ⇒ 100億ドル(2014年 10月)⇒終了(2014年 10月) MBA国際金融2017 5
米国の長中期金利 Data: Datastream MBA国際金融2017 6
米国のCPIインフレ率 Data: Bureau of Labor Statistics MBA国際金融2017 7
米国の失業率 Data: Bureau of Labor Statistics MBA国際金融2017 8
FRBの金利引上げ • 2014年 3月19日のFOMCのステートメントでは、「資産購入プロ グラムが終わってから相当の期間はFF金利を現在の目標幅に 維持することが適切であろう」と叙述されていたところ、Yellen FRB議長がFOMC後の記者会見で「相当の期間」は 6か月程度 であると発言。量的金融緩和政策を終了した後6か月ほどでFF 金利を上げ始めることが示唆。 • これは、まさしく量的金融緩和政策の出口戦略から金利引上げ 政策への転換を意味する。そのため、市場参加者は、2015年春 には米国の金利が引き上げられ始めると予測。 • 2015年 12月16日に金利引上げ( FF金利の目標値: 0%~ 0. 25%⇒ 0. 25%~ 0. 5%)を実施。2016年 12月14日、2017年 3月15 日、2017年 6月14日、0. 25%ポイントずつ引上げ、 2017年 6月14 MBA国際金融2017 9 日に 1. 00~ 1. 25%。
FRBの資産圧縮 • 2014年 9月16日、金融政策正常化計画(Policy Normalization Principles and Plans)を発表。⇒漸進的な資産圧縮 • 2017年 6月14日、FOMCがFRBの資産圧縮計画の具体的なアプ ローチを合意。 ①米国債: 60億ドル/月から開始、12か月にわたって 3か月毎に段 階的に 60億ドル/月ずつ縮小額を 300億ドル/月に達するまで増加。 ②MBS等: 40億ドル/月から開始、12か月にわたって 3か月毎に段 階的に 40億ドル/月ずつ縮小額を 200億ドル/月に達するまで増加。 • 2017年 9月20日、FOMCがバランスシート正常化プログラムを開 始することを決定。 MBA国際金融2017 10
グローバル金融危機のアジアへの影響 • グローバル金融危機以前、米欧と日本との間で金利 差があったが、危機時、米欧金利急低下、それ以降超 低水準(図 1 a)。 ⇒円キャリートレードが発生。東アジア地域の域内にお ける大きな資本フローにも関係した。 • グローバル金融危機によって、キャリートレード(資金) が引き揚げられた。 • 東アジア域内で複雑なマネーフローによって、東アジア 通貨間のミスアライメントが発生。 MBA国際金融2017 11
円とウォンと元のAMU乖離指標 Data: RIETI (http: //www. rieti. go. jp/users/amu/index. html) MBA国際金融2017 12
日本と韓国の資本流出入 ( asset and liability balance (net position) of international banks ) 日本 韓国 Data: BIS MBA国際金融2017 13
欧米金利が東アジア諸国の金利や為替瀬相 場や資本フローに及ぼす影響 • 米国の金融政策の出口戦略が東アジア諸国の資本フ ローにどのような影響を及ぼすかを考察するために、 米国(およびユーロ圏)の金利が東アジア諸国の金利 と為替相場及び資本フローの動きにどのような影響を 及ぼしてきたかについて、実証的に分析を行う。 • その実証分析の手法としては、これらの経済変数の因 果関係を実証的に分析することのできる2変数ベクトル 自己回帰モデル(Vector Autoregressive Model, VAR) による推定を行う。 MBA国際金融2017 14
2変数ベクトル自己回帰モデル • 自己回帰モデル • 2変数ベクトル自己回帰モデル MBA国際金融2017 15
分析に用いたデータと分析期間 • 域外国としては米国とユーロ圏。 • 分析の対象国:日本、中国、韓国、香港、タイ、シンガポール、インドネシア、 マレーシア、フィリピン、ベトナムの 10カ国。また、東アジア全体の影響を見る ために、これら10カ国の加重平均値。 • 金利(日次データ):Datastreamから銀行間取引金利(3か月物)。但し、デー タの制約から、韓国、中国は無担保コールレート(オーバーナイト物)、フィリ ピンは財務省証券(TBレート・ 364日物)。 • 為替相場(日次データ):Datastream。 • 東アジア諸国通貨の対AMU(CMI)為替相場・AMU(CMI)乖離指標:RIETI • 投資収支の内の証券投資とその他投資(四半期データ):IMF, Balance of Payments Statistics • 分析期間: 2000年 1月1日~ 2013年 12月31日【日次データ】 2000年第 1四半期から2013年第 3四半期etc. 【四半期データ】 MBA国際金融2017 16
実証分析の仮説(1) 1. 米国金利の変化が当該国の金利にどのような影響を及ぼすか? 仮説1:資本規制・外為管理がなければ、米国の金利が上昇すれ ば当該国の金利も上昇する。 2. 米国と当該国との金利差の変化が当該国通貨の対ドル為替相 場にどのような影響を及ぼすか? 仮説2:資本規制・外為管理がなければ、金利差(米国金利-当該 国金利)が上昇すれば当該国通貨の対ドル為替相場は減価する。 MBA国際金融2017 17
実証分析の仮説(2) 3. 日米金利差の変化が他の東アジア通貨にどのような影響を及ぼ すか? 仮説3:日米金利差(米国金利-日本金利)がプラスに拡大すれば、 キャリートレードを活発化し、他の東アジア通貨が対円(あるいは対 AMU)で増価する。 4. 米国と当該国との金利差あるいは予想収益率差の変化が当該 国の資本流出入にどのような影響を及ぼすか? 仮説4:米国と当該国との金利差あるいは予想収益率差が米国に 有利に変化すれば、当該国から資本が流出する。 MBA国際金融2017 18
表 1:欧米の金利と東アジア諸国の金利との関係 ○:有意に(95%の信頼区間)期待される結果。△:有意ではないが、期待される結果。×:期待される結果ではない。 MBA国際金融2017 19
米国金利ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Interest rate in US ⇗ ⇢ interest rate East Asian country ⇗ Japan Korea Hong Kong Singa pore MBA国際金融2017 20
表 2:欧米との金利差と東アジア諸国通貨為替相場との関係 MBA国際金融2017 21
金利差ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Interest differentials (US–Asia) ⇗ ⇢ exchange rates (N. C. /US$) ⇗ Depreciation of N. C. against US$ Japan Korea Hong Kong Singa pore MBA国際金融2017 22
金利差ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Interest differentials ((US+euro)–E. Asia) ⇗ ⇢ US$+euro/AMU ⇘ Depreciation of AMU against US$+euro MBA国際金融2017 23
表 3:日欧米金利差と東アジア諸国通貨為替相場との関係 MBA国際金融2017 24
日米金利差ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Interest differentials (US–Japan) ⇗ ⇢ N. C. /AMU ⇘ Appreciation of N. C. against AMU Korea Hong Kong Singa pore Thaila nd MBA国際金融2017 25
表 4:内外金利差・予想収益率格差と資本フローとの関係 MBA国際金融2017 26
金利差ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Interest differential ⇗ ⇢ portfolio investment (Asset–Liability) ⇗ Japan Korea Hong Kong Singa pore MBA国際金融2017 27
金利差ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Interest differential ⇗ ⇢ other investment (Asset–Liability) ⇗ Japan Korea Hong Kong Singa pore MBA国際金融2017 28
予想収益率差ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Expected return differentials ⇗ ⇢ portfolio investment (Asset–Liability) ⇗ Japan Korea Hong Kong Singa pore MBA国際金融2017 29
予想収益率差ショック( 1 S. D. )に対する累積応答関数 (点線:± 2 S. E. ) Expected return differentials ⇗ ⇢ other investment (Asset–Liability) ⇗ Japan Korea Hong Kong Singa pore MBA国際金融2017 30
実証分析結果のインプリケーション-出 口戦略・金利引上げの影響- • FRBの出口戦略・金利引上げによって、東アジア諸国の金利 がそれを追随するような形で上昇することが予想される。 • 東アジア諸国金利の上昇が抑制されたり、後れを取ると、米国 に有利な金利差が発生し、東アジア諸国通貨が米ドルに対し て減価することが予想される。 • FRBの出口戦略・金利引上げによって、内外金利差や予想収 益率格差を東アジア諸国に不利となり、東アジア諸国から証券 投資やその他投資において資金逆流や資本流出が発生する ことが予想される。 MBA国際金融2017 31
FRB利上げに対する金利の反応 MBA国際金融2017 Data: Datastream 32
FRB利上げに対する為替相場の反応(2015. 1. 1=1) MBA国際金融2017 Data: Datastream 33
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